レギュレーションと車体設計

Last-modified: 2009-10-09 (金) 15:35:49 (5333d)
Top / レギュレーションと車体設計

車体設計に入る前に気をつけましょう

そもそも、エコのムーブとは何でしょう

いまここで話をするのは、ワールドエコノムーブという記録会の決まりに合わせて製作された車両ついてです。

ワールドエコノムーブについてはクリーン・エナジー・アライアンスを見てもらったほうが早いですが、自分もそうだったんですが、見ただけでは今一理解できなくて、誰かもうちょっと具体的に説明してくれないかなとおもいました。ですので、もう少し分かり安い形で説明しようと思います。

殆どの車は小さくて細長くて流線型みたいなものが多いです。それは後の方でも説明しますが、空気抵抗を小さく車体を軽くするためです。

駆動力源はバッテリーで、モーターを回して移動します。バッテリーは、スクーター位のスターター付きに使われるFT4L等の小型シールドバッテリーが多いです。その他には、FPX12等の無停電電源用のものの場合もあります。

その車は基本的に1人乗りです。今は1人乗りのレースしかないので、2人乗りのものが無いけど、将来は出来るかもしれません。

その車で、1時間または2時間の決められた時間に一番長い距離を走った車が優勝と言うシンプルな競技です。

clip_image010.jpg

車体の決まり事はどういうことがあるか

WEMと言うレースカテゴリーは、車体の大きさは一応きまっています。しかし、規定の大きさは長さ3メートル以下、横幅と高さは1.6メートル以下(大会により多少の差があります。)くらいに決まっています。

横幅と高さに関しては、これを超えて大きく作るのはまずありえませんが(空気抵抗の頁を参照)、長さに関しては空気抵抗を小さくできるので、3メートルでも足りないくらいです。(これも、後で説明します。)

小さい車体は軽く出来やすいですから、なるべく小さな車体にするほうがいいのですが、ハンドルの切れ角が足りなくて安全にコースを回れなかったり、トレッドが狭すぎて横Gで倒れてしまっては意味がありませんから、ぎりぎりのサイズを見極めるのが難しいです。   

以前は2輪車のエントリーも有りましたが、主催者が2輪車のエントリーを受け付けないオーガナイザーが増えたので、最近は3輪以上の車のほうが主流です。
 
車体の主構造材は、うちのようにアルミ材は特殊な部類で、殆どの車はカーボンファイバーのモノコックかカーボンカウルにフレーム付きです。まあベニア製の車もありますが、設計スキルが高くないと難しい材料です。

バッテリーの決まり事はどういうことがあるか

バッテリーは先の頁でも説明しましたが、オートバイ用のシールドバッテリーを使います。

シールドバッテリーといっても、皆さんが普通に目にする自動車用のバッテリーと同じものです。

ただ、転倒の可能性の高いオートバイと言う乗り物にあわせ、横にしても電解液が漏れてこないように対策がされているものです。

電池の種類では硫酸鉛バッテリーというものらしいです。                       

ニッケル水素とかリチュウムイオンとかニッケルカドミュウムとかいろいろありますが、基本的に主催者指定で、主催者が準備したものを参加するイベントの会場で配るので、他の物を使うことは出来ません。

この硫酸鉛バッテリーというのが、普通に使うとあまり電力が取り出せないんだけど、充電の方法とかの工夫で、思っている以上に電力が取り出せるのでなかなか奥が深いです。

硫酸鉛電池は、基本的に暖めたほうが容量が増えます、各イベントで、バッテリーの加温に関して規制があるのは加温過剰で、バッテリーを壊すと有毒ガスが発生する恐れがあるためです。気をつけましょう。

どんな形でレースが行われるのでしょうか

最も多いのは、2日間で行われるパターンですので、それについて説明します。

初日は、午前中に練習走行があり、午後から、予選があります。

2日目の決勝は、全ての車両が予選順位に並んで、一斉にスタートし、1時間もしくは2時間の走行距離を競います。

その為、予選順位が良く前からスタートした方が、ほかの車を抜く作業が少なく安全にエネルギー損失も少なくレース序盤を走れます。

ですので予選の順位を上げるため、午前中の練習では、より正確にギア比や走行パターン等を予測する必要があります。

実際のレース会場で事前に練習走行できる場合は、なるべく多くの練習走行をし、バッテリーの放電特性と車両性能を把握したほうが良いでしょう。

ともあれ、練習走行で大体のギア比を決めたら、予選の走行データと予想データの誤差を確認し、最も走行距離が伸びるであろう走行パターンとギア比で、決勝を走りましょう。

エントリー台数が多い場合、速い組と遅い組に分けられてしまう場合もありますが、予選でパンクなどのトラブルでうまく走れなくても、決勝できちんと性能を発揮して、速い組の1番より走行距離が多ければ優勝です。

通常の自動車レースと違うのはこの点で、「電気自動車の時間あたりの走行距離記録会」ですので、予選でトラブルがあっても、決勝で記録がでれば優勝はその車になります。

雨などの気象条件が大きく変わる場合は、主催者の判断で、予選組み分けごとに個別表彰になる場合もあります。

安全対策として、心がけるべきこと

さまざまな考え方の人が、いろいろな基準で車を作れることが、WEMレースの面白さではありますが、安全対策をまったく意識していない車もあり、それについては少々改善をして欲しい場合も有ります。

  1. 前方や後方の視界が悪く、多くの車と混走するのに問題がある車。
    窓面積が、圧倒的に足りない場合や、主骨格やフロントタイヤなどの機能部品で、視界が遮られるもの、ミラーの取り付けが甘いうえ、絶対面積が少なく、後ろがまったくみえないもの、乗車姿勢に起因するものなど、原因はさまざまですが、なるべく視界を確保するようにしたほうが良いです。
    他車の発見が遅れることにより、重大な事故につながる恐れがあります。
  2. 外皮の剛性が足りない又は、フレーム等の剛性部材から、体の一部が、はみ出している車。
    私たちの車は、外皮は、アルミニュウムの5052材の0.5ミリを、2ミリの骨格材に、スポット溶接や接着リベットで取り付けられているので、他車との接触や衝突で怪我をしたことはありませんが、ペット樹脂やポリカの薄板で車体を作っていて、フレームよりも人の体が出ている車は、他の車とぶつかれば最悪骨折位はするのではないかと思います。

車輪も20インチですので、万が一転倒しても車輪が車体重量を支えるので、ドライバーの首に車体重量がかかることは、基本的にないです。

車輪に14インチを使うと、転倒時の生存空間が20インチに比べて150ミリ以上低くなるので、首へのダメージを考えるとロールバーは必須だと思います。

競技車両が軽いといっても、人と合わせて80キロあるものが時速40キロ近くで移動しているので、転倒車両に減速不十分な車両がぶつかれば、死亡事故になる可能性もあります。これは、設計者が責任を持って対策しないといけません。

仲間や友達が怪我をするのは辛いですし、それが回復しないほど酷かったり、死亡などの最悪の事態にならないために、車を設計する段階で、性能と共にアクシデントに対する乗員保護対策も考えておきましょう。

タイヤの選択はどうするべきなのか

タイヤはエコラン専用の物が発売されていて、[[ミシュラン>http://www.michelin.co.jp/compet/ecorun/p1523tire.htm]]や、[[IRC>http://www.irc-tire.com/bc/]]のホームページから注文できます。

タイヤは、自転車用の物や車椅子マラソン等の物より専用の物を使うほうが損失が少ないです。

空気圧を高くする方が転がり抵抗小さくできますが、パンクのリスクも増えます。

皆さん5キロ〜8キロぐらいで使っています。路面の荒れたコースでは、低めの設定にする方が良いです。パンクのロスは非常に大きく、車両の路面に対するクリアランス設定によってはピットに帰って修理できなくなります。

エコランのタイヤは高反発のゴムを使っていて、普通のタイヤとは真逆の特性になっていて、普通のタイヤのように路面からの衝撃を熱に変えて吸収しません。低反発のゴムを使った普通のタイヤと転がり抵抗が大きく違うのはこのせいらしいです。

ただこの特性は、逆に言えば、路面を捉える力が弱いと言うことでもあります。路面のグリップの落ちる雨などでは、スピンやコースアウトなどに注意する必要があります。さらに、雨ではゴミなどが流れてきてパンクしやすい路面状況になります。これにも注意が必要です。

タイヤと一緒に注意しなければいけないのはタイヤの中に入れるチューブです。チューブが厚いと、せっかく高反発のエコランタイヤに空気をいっぱいいれても、チューブがタイヤの変形エネルギーを熱に換えて消費してしまいます。ウレタンなどの、薄いプラスチックでできたチューブがあるので、それらを使うとエネルギーロスが少なくなります。

予選がベストラップ方式の場合は、無理せず普通の自転車用タイヤに交換して走ったほうがスピンやパンクのリスクを回避できます。ただ注意が必要なのは、グリップが高いので、転倒などのクラッシュの可能性が大きくなります。フルアタック前に、ドライバーの慣らしと車の挙動のチェックを兼ねて、徐々に速度を上げるようにしたほうが無難です。

空気抵抗や転がり抵抗などの事

空気抵抗と転がり抵抗については、正直あまり簡単に説明できることでも有りませんので簡単にいきます。(説明する知識が足りません)

転がり抵抗は速度と比例して大きくなり、タイヤの性能が同じならベアリングの性能によって変わります。

同じベアリングを使うにしても、中に入っているグリスの粘度をかえたり、ベアリングにかかる荷重量、方向、スラスト方向にかかる与圧などで重さが変わります。ベアリングの使い方は各メーカーのカタログに技術資料としてのっています。ベアリングメーカーの技術相談などの窓口に電話して、頼めば無料で送ってくれるところもあります。どこのメーカーのカタログでも大きな違いはないので、いろいろな所に掛けてみて、何とか1冊は手元におきたいですね。学生なら学校名、社会人なら会社名を言えばだしてくれます。送るほうも色々都合があるので、カタログをくれないからと言って担当をうらむのはやめましょう。(笑)

空気抵抗は速度の2乗で増加します。

空気抵抗というと、一般的には「CD 0.xx」とかいう形で車のカタログなどに記載されてるあれです。実はこれは、空気抵抗係数とかいう数字で、実抵抗はこれに前面投影面積をかけた「CDA」と言う数字で表されます。 前面投影面積が同じでも、車体をうまく設計してCD値を小さくすれば実抵抗は小さく出来ます。空力的に洗練された車を風洞実験無しで作るのは難しいですが、わからないながらもより良い形状になるように、考えて設計しましょう。空気抵抗の小さくなるアイデアが見つかったら教えてください。お願いします。

車体の軽量化が、何でそんなに大事なのか

車体を軽量にしあげれば、重りを使って重心を下げることが出来ます。重心が低ければコーナーリングも安定します。ブレーキだって効くし、加速のエネルギーも小さくて済みます。

上りのきついコースではモーターを2個以上積むこともあるし、キャパシターを積むこともあるでしょう。

色々なコースで色々な作戦を使うのに、車体が重いと色々積んで重量が増える分不利になってしまいます。

強度不足で安全性に問題が出ては本末転倒ですが、なるべく軽いに越したことはありません。

操作性、操縦安定性の事

エコランの車は前面投影面積を小さくするためにトレッドを狭くして幅をつめ、空力を改善するため長いボディを持っています。

中に人が乗るので、ホイルベースは長くなりがちですが、旋回半径を小さくしつつ蛇角を確保するために安定性の不足したアライメントの車が多いようです。

具体的には転蛇輪の直進状態と、旋回状態の車高差が、車をまっすぐに戻す力の元になっていて、それはタイヤのグリップによって増減します。

ある程度アライメントをつけても直進安定性が回復しないなら、転蛇軸の軸重を増やすと良いです。

直進安定性を増やせば、ストレート走行中は、ドライバーがほかの作業に気持ちを奪われても勝手にまっすぐ走ってくれます。

運転の楽な車はドライビングミスも減り、安全です。